- ※読後メモ
- 後ろに行くに従って,経済学的な観点に従ってどう考えるかを示すことを目指してはいるものの,経済学の議論の枠組から離れていく印象。
- 更生保護全般についての概説兼問題点指摘だと思えば良い本だが,タイトルとはややミスマッチかも。
- Kindle Unlimitedに入ってるのか…。だいぶ前に紙で買ったんだが。
- 著者 経済学部出身。慶應義塾大学商学部教授。
- 社会がどのように犯罪と向き合い,どのような形で社会に受け入れていくことが効率的か示したもの
- 矯正収容者のコストは一人あたりおよそ年間300万円。
- 比較優位の原則 人間の持つ能力を自分のなかで相対評価する。
- どんな人にも必ず比較優位があるから,そこに注力させるのが全体として効率的。
- なぜ比較優位が働かないか
- コスト
- 楽さ
- ラベリング
- 赦し・not 和解 but 受け入れ。
- ※合理性のみならず方法や宗教にまで言及していて,やや別の原理の話になっている。
- ※とはいえ,犯罪に対する固定観念をもっているであろう想定読者との関係では必要なことか。
- 厳罰化の合理性
- 合理的利得を減らし,合理的損失を増やす。
- 経済学的に
- 合理的に抑止力を高めるには
- 逮捕確率を上げるより懲罰を重くする
- 懲罰はできる限り罰金刑と社会的制裁のウエイトを上げる。
- 難点
- フェアネスの欠如→法令遵守意識の低下
- 持たざる者には機能しない
- 合理的に抑止力を高めるには
- 犯罪者の無力化
- 収容
- 年間300万円かかる。
- 性格保護の年間170万円の方が安い
- 一つの考え方
- 社会復帰したとき年間130万円を超える損失を社会に与えるかどうかで判定する
- 論点
- 代替効果
- 年齢による確率低下
- 抑止力の実証分析
- 回帰分析
- 内生性の問題
- ※マクロ経済学の入門書を読んだ経験が必要かもしれない。
- 抑止力と無力化の識別問題
- 米国の実証分析
- Levitt(1996)
- 米国の厳罰化政策には一定の合理性が存在した
- Kuziemko and Levitt(2004)
- 違法薬物は別の犯罪等の負の外部性があるから刑罰対象となる。
- 乱用者の価格弾力性はゼロに近いため取り締まり強化は別の犯罪を増やす可能性
- 警察や刑務所等の公的機関の資源には限りがあり,薬物犯罪に注力すると他の犯罪を誘発する。
- 薬物使用者レベルでは,取り締まり強化は合理的ではなかった。
- Levitt(1998a)
- 暴行,住居侵入,窃盗,自動車泥棒については抑止力効果が有意に推定される。
- 強姦及び強盗では無力化効果が有意。
- Levitt(1996)
- 日本での実証分析
- 村松・竹内(1990)
- 検挙率,死刑判決率は有意に推定されていない。
- 失業率,被生活保護率はともに有意にプラス。
- 日本では,死刑には犯罪抑止効果はなく,経済や社会の不安要素をなくすことの方が有効。
- 批判 内生性。トレンドの偶然の一致の可能性。
- 秋葉(1993)
- 死刑の殺人抑止力が有意
- 内生性には配慮しているが,トレンドを有する時系列データの多用。
- 牛山(2008)
- 強盗について厳罰化の効果が有意
- 説明変数として認知件数が用いられていることに注意を要する。浜井(2006)の指摘するとおり,収容者数は多くのフィルターを経た結果であるところ,行政評価の影響を受ける可能性。
- 村松・竹内(1990)
- 回帰分析
- 証拠に基づく政策の必要性
- 刑事裁判と応報
- 誰も満足しない刑事裁判
- 反省ありきの日本の裁判
- 応報の手段としての裁判
- なぜ被害者は原告になれないのか
- 刑罰の重さは社会的に最適となりうるか
- 社会的に最適な解決とは何か
- 刑罰のコストと便益
- どうすればそれに近づけることができるか
- 応報効果の測定が難しい
- 判例の積み重ねによって実験的に検証される
- 法学における刑罰の考え方
- 応報刑論
- 刑罰の上限
- 相対的応報刑論
- 目的刑論
- 経済学的評価
- 「責任」とは経済学的にどのように解釈されるか。
- 世間が納得するような責任の取り方
- 世間の納得と被害者の納得は乖離する
- 修復的司法の可能性
- 被害者の要求する責任を変えていく
- 司法及び正義と経済学
- 正義にはコストがかかる。
- 経済学的な視点を欠いた司法はサステイナブルではない。
- 応報刑論
- 社会的に最適な解決とは何か
- 刑務所を考える
- 刑務所の行動原理
- 事なかれ主義
- 秩序維持の工夫
- 規則的な生活
- 運動会
- 刑務作業
- 仮釈放
- 受刑者のランク付け
- 刑務官との信頼関係
- 刑務所の効率的運用
- 経理夫の活用
- コスト削減
- 経理夫の不足
- PFI刑務所
- 受刑者全体の能力低下
- PFI刑務所
- 経理夫の活用
- 出所後のことを考えない刑務所
- 刑務所の枠組は2つの点で構成という課題に適していない。
- 更生のためにかかる時間と刑期のギャップの存在
- 社会と刑務所のギャップの存在
- 刑務所の枠組は2つの点で構成という課題に適していない。
- 行き詰まる刑務作業
- B型事業所の仕事を食っている状態。
- 改善指導の効果
- 現時点では評価困難
- 問題点としては
- 受刑者の本気度
- 満期出所者への対応
- 始まった福祉との連携
- 刑務官のインセンティブを高めよ
- 今後の刑務所のあり方とは
- インセンティブ設定。たとえば
- 更生の難易度に応じた分類
- ランダム平等条件での処遇
- インセンティブ設定。たとえば
- 刑務所の行動原理
- 少年犯罪とサイコパス
- 少年には懲罰ではなく更生
- 少年院とは
- 少年犯罪とは
- 小栗(2010)による
- 自尊心回復手段としての非行
- 発達障害児の非行
- 少年院での実践
- サイコパス
- 更生保護
- 更生保護の現状と評価
- あとがき