司法試験刑事系短答平成30年第1問の解説

問題

刑罰論に関する次の各【見解】についての後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているも のを2個選びなさい。

【見解】

A.刑罰の目的は,行為者が将来再び犯罪を行うのを予防することにある。

B.刑罰の目的は,刑罰による威嚇を通して一般人が犯罪を行うのを予防することにある。

C.刑罰は,犯罪を行った者が果たさなければならないしょく罪である。

D.刑罰の目的は,処罰により行為者の行為が犯罪であると公的に確認され,これを通して一般人が犯罪を行うのを予防することにある。

【記述】

1.Aの見解に対しては,軽微な犯罪を行った者であっても,その更生に必要であれば,長期の拘禁刑を科すことが正当化されるおそれがあるとの批判が可能である。

2.Bの見解に対しては,刑罰は重ければ重いほどよいという考え方に陥るおそれがあるとの批判が可能である。

3.Cの見解は,軽微な犯罪を行った者であっても,一般予防の必要性が高いときはその刑を重くしなければならないとの考え方に親和的である。

4.Cの見解に対しては,犯罪を行った者に対し,その処罰を猶予する余地がなくなるとの批判が可能である。

5.Dの見解は,自由意思の存在を認めない決定論を前提として初めて成り立つものである。

解答

3,5

解説

刑罰論の基本に関する出題であるが,受験的に手が回っていない可能性が高い範囲でもある。刑法に極力コストをかけないという観点からは,次のように解く。

まず注目すべきは,各記述の末尾である。「批判が可能である」「考え方に親和的である」「前提として初めて成り立つ」の3種類がある。このうち,「批判が可能である」という選択肢は,見解と記述を検討して可能な経路が1本でもあれば良い。他方,「考え方に親和的である」という選択肢は客観的な評価であると思われ,判断が難しい。また,「前提として初めて成り立つ」という選択肢は,これが不可欠の前提であることを意味するから,他の思考経路が1本でもあれば誤りとなる。

あきらめ良くいくなら,3つある「可能である」を正しいとして,3と5。これで正解になる。

いちおう検討する場合は,「可能である」とする1,2,4から検討する。確信までは要らない。いけそうやなというくらいで確認すればOK。

この問題を受けてやるべきこと

知識で解決できない場合は,選択肢自体の論理構造に目を向ける癖をつけること。

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