逮捕・勾留されている者の選挙権の行使

滋賀県高島市では先週末,市長選挙・市議会選挙が行われました。
そこでふと気になったのが,逮捕・勾留されている者の選挙権の行使の可否です。

刑事弁護をする弁護士ならば誰でも知っている(べき)と思いますが,有罪の判決を受けて服役している場合には,選挙権がありません。

公職選挙法11条1項が次のように規定しているからです。

次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
一  成年被後見人
二  禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
三  禁錮以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
四  公職にある間に犯した刑法 (明治四十年法律第四十五号)第百九十七条 から第百九十七条の四 までの罪又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律 (平成十二年法律第百三十号)第一条 の罪により刑に処せられ、その執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた者でその執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた日から五年を経過しないもの又はその刑の執行猶予中の者
五  法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁錮以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者

この中には未決の者の規定はありません。
しかし,逮捕・勾留されている者が投票のために投票所に行けるとも思えません。

ですが,選挙権が重要な人権(憲法15条)であることや,無罪推定の原則からすれば,投票の方法はあるはずと思って調べてみました。

結論から言えば,不在者投票を行うことになるようです。

公職選挙法48条の2第1項が次のように規定しています。

選挙の当日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれる選挙人の投票については、第四十四条第一項の規定にかかわらず、当該選挙の期日の公示又は告示があつた日の翌日から選挙の期日の前日までの間、期日前投票所において、行わせることができる。
一  (略)
二  (略)
三  疾病、負傷、妊娠、老衰若しくは身体の障害のため若しくは産褥にあるため歩行が困難であること又は刑事施設、労役場、監置場、少年院若しくは婦人補導院に収容されていること

これに対応する政令として,公職選挙法施行令50条以下の規定があり,まとめると,身体拘束を受けている者は刑事施設の長を通じて投票用紙及び投票用封筒の交付を受け,刑事施設の長を不在者投票管理者として投票することになることがわかりました。

次回の大きな選挙は夏の参議院選挙です。
その頃に,もしいわゆる身柄事件を担当していたならば,選挙権行使が出来る旨をアドバイスしようと思います。