ホテルのアメニティを置くことができなくなる話と法令

木曽崇さんの次のTweetが話題のようです。

反応を眺めたところ,色々と誤解が発生しているようでしたので根拠法令に遡って何が起きるのかを確認していきましょう。

直接の省令

「4月から全国のホテルは客室に歯ブラシ等のアメニティを置くことが出来なくなります(リサイクル製品以外)。」という状態を発生させる直接の法令は「特定プラスチック使用製品提供事業者の特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関する判断の基準となるべき事項等を定める省令」です。

この省令は「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(令和三年法律第六十号。環境省の用いる略称「プラスチック資源循環法」。業界だと「プラ新法」等。 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=503AC0000000060_20220401_000000000000000 )の28条1項及び30条2項の規定に基づき定められたもので,「その事業において特定プラスチック使用製品(…略…「容器包装再商品化法」…略…第二条第一項に規定する容器包装を除く。)として政令で定めるものをいう。以下同じ。)を提供する事業者であって、特定プラスチック使用製品の使用の合理化を行うことが特に必要な業種として政令で定めるものに属する事業を行うもの(…略…「特定プラスチック使用製品提供事業者」という。)が特定プラスチック使用製品の使用の合理化によりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するために取り組むべき措置に関し、当該特定プラスチック使用製品提供事業者の判断の基準となるべき事項を定めるもの」です。

取るべき措置

そして同省令は,役務の提供に際しては消費者にその提供する特定プラスチック使用製品について

  • 有償で提供すること
  • 使用しないように誘引するための手段として景品等を提供すること
  • 使用について消費者の意思を確認すること
  • 繰り返し使用を促すこと
  • その他の措置(その他の前に「、」のない「その他」です。)

を講じることにより,プラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制を促進することを求めています(2条1号)

措置の対象となる物品

そこで特定プラスチック使用製品とは何かが問題となり,政令(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令)を参照するわけですが,政令5条が表で業種と製品の対応を次のように定めています。

製品:フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー及び飲料用ストロー
業種:各種商品小売業(無店舗のものを含む。)、飲食料品小売業(野菜・果実小売業、食肉小売業、鮮魚小売業及び酒小売業を除き、無店舗のものを含む。)、宿泊業、飲食店及び持ち帰り・配達飲食サービス業

製品:ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ及び歯ブラシ
業種:宿泊業

製品:衣類用ハンガー及び衣類用カバー
業種:各種商品小売業(無店舗のものを含む。)及び洗濯業

これにより,宿泊業の提供する「フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー及び飲料用ストロー」「ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ及び歯ブラシ」が特定プラスチック使用製品であることが分かります。

そして,これら政省令を下位法令としてもつプラスチック資源循環法が4月1日から施行される結果として,「歯ブラシ等のアメニティを置くことが出来なくな」るわけです。

勧告・命令等の一定の強制力をもつ措置を受けるのは特定プラスチック使用製品多量提供事業者(前年度における特定プラスチック使用製品の提供量5トン以上の特定プラスチック使用製品提供事業者)ですが,排出の抑制義務自体は全ての特定プラスチック使用製品提供事業者が負うという建て付けです。

具体的な対応

これら規制を受けて宿泊業者は特定プラスチック使用製品であるアメニティの提供に際して有償提供,景品提供,意思確認,繰り返し使用の促しをしなければならない法的義務を負うのですが,この義務と利用者の利便性あるいはホテルのホスピタリティの調整をどう図るかを各宿泊業者が工夫していくことになります。

従前から,ビジネスホテルでは,客室設置ではなくフロント前設置をするという方法が採られていましたし,それで特に問題は起きないでしょう(欲しい人がもっていく→意思確認)。

問題となりそうなのは高いホスピタリティが求められる温泉旅館や高級ホテル,それから顔を合わせるのが憚られることの多いラブホテルでしょう。

連泊の宿泊者に対する対応は施設の種類を問わず比較的容易で「環境のため,アメニティの補充は1日おきとなります。必要があればお声がけください。」としてしまえば繰り返し使用の促しと意思確認を果たしていると言えそうです。

問題は1泊のみの場合です。,温泉旅館や高級ホテルでアメニティなし(有償化)という訳にもいかないでしょうから,個別の意思確認をとることになりそうです。
インターネット予約の場合はアメニティを申し込むというチェックボックスを設置してデフォルトでオンにしておくということも考えられます(が,あまりに脱法的に過ぎて薦めにくい感覚です。)。
ホスピタリティと一体的な設計としては,アメニティを数種類用意しておき,選べるサービスとして設計することが考えられるかもしれません。

ラブホテルの場合については,顔を合わせないことを優先すれば入室後の非対面リクエストを受け付けるということになりそうですが,従前からある程度行ってきたことではあると思われるので何とかされるでしょう。

一般的なアメニティの話に加えて,「ラブホテルのコンドーム」はという声がありました。
これは簡単な話で,コンドームは特定プラスチック使用製品にあたらないので影響されません。アメニティという言葉には含まれるのかも知れませんが,法令で規制している特定プラスチック使用製品としてのアメニティには含まれていないのです。ですから,従前のとおり備え付けておくことができます。この備置きにも微妙な法律の話があったりしますが,それはまた他日。

資料

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令

特定プラスチック使用製品提供事業者の特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関する判断の基準となるべき事項等を定める省令