退職代行会社から退職通知を受け取った会社の対応方法

1)代行会社が通知を送付する権限を有していることの確認

大前提として,退職代行会社(以下「代行会社」と表記。)による退職通知が退職者として記載されている本人(以下,単に「本人」と表記。)の意思で送付されているかどうかの確認が必要です。

LINEや電話による依頼のみで代行を行っている思われる代行会社もあり,なりすましによって代行会社へ依頼することも不可能ではないと思われるところ,当該代行会社がどのように本人の意思を確認しているかが明らかではないからです。

したがって,代行会社から退職通知を受けた場合,代行会社に委任状の呈示を要求しなければなりません。

勤務先の会社として対照できる筆跡くらいはどこかにあるでしょうから,まず委任状の呈示を受けて本人による依頼かの確認をしましょう。

委任状が呈示されない等の理由により本人の意思による通知か否かが確認できない場合は,代行会社と本人にあてて確認できないため有効な退職申出とは取り扱えない旨を通知することになります。

2)即日の退職を認めるか否か

本人の意思による通知の確認ができたとして,次に通知のとおりの即日退職を認めるか否かを検討することになります。

法律上,①期間の定めがない雇用契約の場合は2週間前までの申出,②期間の定めがある場合は労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後はいつでも,1年経過以前はやむを得ない事由がある場合に退職できるとされています(その他の場合もあるほか,就業規則の検討も必要です。)。

したがって,これらの条件を満たさない即日の退職申出を受け入れるかどうかについては検討が必要です。

シフト等人員の都合で営業ができなかったり制限されたりすることとなる場合や業務の引き継ぎを必要とする場合は,即日の退職申出を受け入れることはできないことになりますので,期間の定めのない雇用契約の場合は2週間後,期間の定めのある雇用契約の場合は法定の条件を満たすまでのは退職を認められない旨を,代行会社と本人とに通知して出勤を促すことになります。

代行会社を使って退職通知をしている本人が出勤してくることはあまり期待できないでしょうから,この通知は主に将来の損害賠償の請求や懲戒処分による退職金支払いの削減等のための意味あいが大きくなりますが,通知を行っておかないと,即日の退職を認めたものと理解されかねませんので通知は必要です。

3)有休消化の申出のある場合

有給休暇を使い切った時点での退職の申出がされる場合もあります。

この場合,就業規則等に照らして申出が有効となるのはどの時点であるか,退職がどの時点であるかを検討した上で対応を考えることになります。

時季変更権による出勤と引き継ぎ指示などを出したくなりますが判例上は厳しいものがありますので,引き継ぎの必要等があれば退職時期について本人との間で交渉を行うことになります。この場合,代行会社は交渉権限を有しませんので,代行会社に対して交渉を行うため本人に連絡する旨を通知するとともに,本人に連絡をとって交渉を行います。

4)まとめ

法律上,退職代行会社は,本人の意思を一方的に通知することしかできません。また,退職代行会社から退職通知があったからといって,そのとおり即日の退職となるものでもありません。

無意味に紛争を生じさせるのは双方にとってコストですから,是が非でも退職代行会社による通知の効力を否定すべきということにはなりませんが,他方で雇用主として請求できる事項については適切に請求したいところです。退職の通知を受けた際,そのままの退職を認めるべきかを迷う場合には早急に弁護士に相談されることをおすすめいたします。