49条1項は,「弁護士は、国選弁護人に選任された事件について、名目のいかんを問わず、被告人その他の関係者から報酬その他の対価を受領してはならない。」と規定する。
これに関し,国選弁護人が勾留準抗告認容等による釈放によって国選弁護人としての地位を失った後に,不起訴を目指すべく示談活動を行う場合に私選弁護人となることができるかどうかという問題を生じる。
運用としては,本条を堅く解釈してこれを一律に不可とする例(文言に忠実だが弊害が大きい解釈。),会内規定による修正として関連委員長の許可にかからしめる例(解説と平仄はとれるが1項の文言との関係で疑義がある解釈。),身体拘束被疑事件と釈放後事件を別事件と解釈する例(解説に反する解釈。)がそれぞれ存在していると聞く。
本条は被疑者国選弁護制度の開始前から存在している規定であって,現在生じている問題は規程策定上,明確には想定されていなかったものと思われる。
しかし,49条2項但し書きが一定の場合にいわゆる私選切り替えを許容していると思われること,49条の解説の書きぶり全体からすると許された私選切り替えの場合に一定の報酬を受けることは前提とされていると思われること(1項の「事件」の範囲の解説と平仄が合わないがそう読まざるを得ない。)からすると,釈放によって国選弁護人がその地位を失った後に私選弁護人として活動することを禁じる理由はないと言うべきである。
むしろ,私選選任を不可とすると,釈放時点では当該事件について最も知悉している弁護人を選任できない依頼者の不利益が大きく,過疎地においては依頼可能な唯一の弁護人を選任できない結果としておよそ弁護人の援助を受けられない場合すら生じる。勾留の初期段階で釈放されている場合,国選弁護人として受ける報酬は総額で2~4万円程度であることも多く,手弁当での活動を期待することにも無理がある。
現在,いくつかの単位会で継続的な勾留全件準抗告運動に取り組んでいること,連合会として逮捕段階までの被疑者国選の拡大を求めていること等からすると,今後この問題の事例はさらなる拡大を続けるものと思われる。
したがって,国選弁護人が勾留準抗告認容等による釈放によって国選弁護人としての地位を失った後に,不起訴を目指すべく示談活動を行う場合に私選弁護人となることができることが明らかとなるような規程の改正又は解説の変更が行われるべきである。