暴力団員と生活保護

       生活保護申請却下取消等(甲事件),生活保護廃止決定取消(乙事件)各請求控訴事件
【事件番号】 福岡高等裁判所宮崎支部判決/平成23年(行コ)第11号
【判決日付】 平成24年4月27日

平成18年3月30日厚生労働省社会・援護局保護課長通知「暴力団員に対する生活保護の適用について(通知)」(乙A4)において暴力団員について補足性が否定されるとする趣旨は,主として暴力団活動を通じて得られる違法・不当な収入については自己申告が期待できず,隠匿が図られることが多いために,公的機関による生活実態の把握や資産等調査による発見・把握が困難となり,ひいては補足性の要件を判断するのが困難になる点にある。

※暴力団員だったとしても,補足性の要件判断が確実に出来る場合には,保護を開始できるということですね。

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ゴルフ場利用と詐欺罪

名古屋地方裁判所判決/平成23年(わ)第1068号、平成23年(わ)第1274号

第5 詐欺罪の成否について
 1 詐欺罪にいう人を欺く行為とは,財産的処分行為の判断の基礎となるような重要な事項を偽ることをいう。上記第2の事実関係によれば,本件ゴルフ倶楽部にとって同倶楽部の施設に暴力団構成員が出入りしているか否かは,ゴルフプレー環境の整備に関わる営業上重要な事項であって,同倶楽部の施設を利用しようとする者が暴力団構成員であるか否かは,同倶楽部従業員においてゴルフ場利用契約を成立させた上,同倶楽部の施設を利用させるか否かの判断の基礎となる重要な事項であり,その点を偽る行為は人を欺く行為といえる。そして,被告人及びFは,本件ゴルフ倶楽部従業員に対して,同倶楽部の施設を利用しようとする者の中に暴力団構成員はいない旨の発言はしていないものの,同倶楽部における上記約款の存在,Fが同倶楽部へ入会した際の手続及び審査の状況等,Fと同倶楽部との契約関係からすれば,Fについては,同伴してゴルフプレーをしようとする者の中に暴力団構成員がいることを告げずに同倶楽部の施設利用を申し込むこと自体,当然にその中に暴力団構成員はいない旨の事実を表しているというべきであるから,真実は被告人が暴力団構成員であるのにこれを秘して上記申込みを行う行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならない。
 2 また,上記第2の事実関係によれば,被告人にも,本件ゴルフ倶楽部が,暴力団構成員の入場及び施設利用を禁止しており,同倶楽部に施設利用を申し込んでも断られる可能性があるとの認識はあったものと認められる。
   しかしながら,Fの同伴者が本件詐欺罪の故意を有していると認められるためには,本件ゴルフ倶楽部の施設を利用しようとする者が暴力団構成員であるか否かが,同倶楽部従業員においてゴルフ場利用契約を成立させた上,同倶楽部の施設を利用させるか否かの判断の基礎となる重要な事項であることを認識しているとともに,Fにおいて,同伴してゴルフプレーをしようとする者の中に暴力団構成員がいることを告げずに同倶楽部の施設利用を申し込む行為自体,当然にその中に暴力団構成員はいない旨の事実を表する行為であることを認識している必要がある。
   この点,ゴルフ場において同伴してゴルフプレーをしようとする者の中に暴力団構成員がいることを告げずにその施設利用を申し込む行為が,一般的に,その中に暴力団構成員はいない旨の事実を当然に表する行為であるとは認められない。加えて,被告人は,Fが本件ゴルフ倶楽部へ入会した際の手続及び審査には何ら関与しておらず,そのほかに被告人がFと本件ゴルフ倶楽部との契約関係の具体的内容を知っていたと認めるに足りる証拠はないことからすると,Fにおいて本件ゴルフ倶楽部の施設利用を申し込む行為自体が,当然に同人が同伴してゴルフプレーをしようとする者の中に暴力団構成員はいない旨の事実を表する行為であることを,被告人が認識していたとは認められない。
   また,被告人は,公判廷において,ゴルフ場で暴力団構成員ないしその関係者がゴルフプレーをすることは特にゴルフ場の不利益になるとは考えていない旨,捜査段階においても,ゴルフ場が暴力団構成員ないしその関係者の施設利用を断るのはゴルフ場自体の方針ではなく,警察からの指導のためだと理解していた旨供述しているところ,上記第2の事実関係中,三重県内のゴルフクラブで施設利用を断られた際の同ゴルフクラブの支配人の言動等をも考慮すると,その供述の信用性を否定できない。そうすると,本件ゴルフ倶楽部が,暴力団構成員がゴルフ場を利用することによる同人らと一般のプレーヤーとのトラブルを予防し,プレー環境を整備するために,同倶楽部自体の方針として暴力団構成員等の入場及び施設利用を禁止していたことまで被告人が認識していたとは認められず,本件ゴルフ倶楽部の施設を利用しようとする者が暴力団構成員であるか否かが,同倶楽部従業員において,同倶楽部との間でゴルフ場利用契約を成立させた上,同倶楽部の施設を利用させるか否かの判断の基礎となる重要な事項であることを認識していたとまでは認められない。

>>>>>>>以下,別事件

3 判示第4の事実について
 (1) 証拠によれば,被告人は,分離前の相被告人であり暴力団構成員であるI1と共謀の上,平成22年10月13日,被害者である判示ゴルフ倶楽部(以下「本件ゴルフ場」という。)が暴力団構成員の入場及び施設利用を禁止していることを認識しながら,上記I1が暴力団構成員であることを秘し,本件ゴルフ場の施設を利用したこと,その際,被告人は利用料金を通常どおり支払ったことが認められる。
   本件ゴルフ場が暴力団構成員の入場及び施設利用を禁止しているのは,本件ゴルフ場に暴力団構成員が出入りすることを許可すれば,同所が暴力団の社交の場となり,暴力団と無関係な一般人がその利用を敬遠するようになったり,暴力団と関係のある企業としてその信用が著しく毀損されるなど,本件ゴルフ場の経営の根幹に関わるような重大な問題が生ずる可能性があるためと認められる。そうすると,利用者が暴力団構成員か否かは,本件ゴルフ場にとって,その利用を許可するための判断の基礎となる重要な事実であり,本件ゴルフ場が,上記I1が暴力団構成員であることを知っていれば,上記I1による本件ゴルフ場の利用を許可しなかったであろうことが認められる。
   よって,被告人らの行為は,欺罔行為に該当する。
   被告人らは,当該欺罔行為により,本件ゴルフ場の従業員を錯誤に陥らせ,その結果,上記I1によるゴルフ場の施設の利用という財産上不法な利益を得たのであるから,詐欺利得罪が認められる。被告人が上記I1に係る施設利用料を支払ったことは,同罪の成立を何ら妨げるものではない。
 (2) 財産的損害の発生を否定する弁護人の主張は,財産的損害とは,財産権の行使として合理的と評価される目的が達成できないのに,これができるように欺かれて財産を出捐したことをいい,被害者が商人の場合,相当な対価が支払われていれば原則として財産的損害がないという意見書(弁32)に依拠するものである。
   しかし,被害者の財産処分に対する保護をそのような場合に限定すべき理由は一切なく,また結論の妥当性も欠き,弁護人の主張は到底採用することができない。